魅力的な山
Sun Dec 05 2021
趣味は登山です、という自己紹介をするとだいたいの人は「何 m くらいの山に登るんですか?」と聞いてくる。
何回か山に登れば分かることだが、山の標高はその山の魅力や難易度(大変さ・危険さ)の目安にはならない。それは沢登り・岩登り・藪こぎ・MTB・冬山などのスタイルで登る場合に限らず、いわゆる一般ルートでも言えることだ。
難易度で言えばで一番分かりやすい要素としては登山口と頂上との標高差があるし、標高差が同じ場合でも途中で細かいアップダウンがあったりとか、地形や足場の安定性、道のわかりやすさ、人の多さ、とにかく色んな要素がある。魅力についてはそもそも人によって違うからなんとも言えないけど、展望や景観だけ切り取っても、山の標高だけでは決まらない。もちろん標高が高いと森林限界を超えて展望が良くなるし、気温が下がって低体温症などのリスクも上がるし、標高に左右されることも多いんだけど、山にはもっと色々な要素がある。
そもそも登山に馴染みない人とっては登山=ピークハント(ある山の山頂を目指す)だけど、縦走(色んな山をつないで歩く)だったりそもそも頂上を目標にしてなかったり、山の楽しみ方にも色々ある。ぼくは縦走でどういう線を描くか、みたいなのが好きで、県境をひたすら歩くとか分水嶺をひたすら歩くとか全山縦走とか、そういうのに惹かれる。町中を散歩するときもなんちゃら通りを全部歩くとかなんとか川の側を全部歩くとかやりがち。もちろんピークハントも好きだけどね。
「何回か山に登れば分かることだが」などと偉そうに書いたが、何回も山に登ってたのに大学一年生のぼくは分かってなかった。それまでの家族登山では北アルプス・南アルプス・北海道の山ばっかり登っていたので「森林限界下の山なんて全部余裕でしょ〜」「どうせ木がたくさんあって大して展望もないんだろうな〜」となめくさっていた。アルプスの山に登るとき森林限界下はだいたい消化試合みたいな感覚だったし。それまでに登った数少ない森林限界下の山がめちゃくちゃ余裕で面白くもなかったせいもある。しかし大学生にもなって、アホだな〜。
東京に出てきた大学一年の夏、奥多摩に行ったこともないのになめきって登った川苔山は山頂からの展望が素晴らしく、近くに立派な滝もあってとても良い山だった。幸い危険箇所もなくそこそこメジャーなルートだったので危ない目にもあわなかった。下山中に一回道間違えて引き返したけど……。奥多摩もそうだけど、街から近い低山はたいてい登山道がたくさんあるし林業の人たちが使ってるような登山道以外の道もあるし、一般ルート扱いでもあまり人が通らなくてわかりにくい道もあるしで、道迷いのリスクはアルプスのメジャールートなんかより全然高かったりする。そしてちょっとコケたら致命的な場所も結構ある。それまで親にくっついて歩いてただけで1人で山登ったこともないしコンパスもちゃんと扱えないのに、奥多摩をなめくさっていたのは本当にアホだった。登山初めての友達を複数人連れてっていたのもあり、この時は深く反省した。
で、この週末も 500m 程度の低山をつなぐ縦走をしてきたんだけど、結局「まあこんなもんだろうな〜」みたいな侮りがあった、というか、あんまり期待してなかった。そしたら予想に反して展望は良いしルートは不明瞭だし足場くっそ悪いし尾根クソ細くて緊張感ある場所もあるしで、なかなか歯応えあって楽しい山行になった。歩いてて気持ちの良い箇所が多い良い稜線なのにマイナールートで全く人がいないのも良かった。「この稜線つないだら線として面白いな〜」って低山の縦走することはちょくちょくあるんだけど、ちょっと地図読みの練習にはなるけど地味だったな〜って感想になることが多く、今回もそんなもんだろうと思ってたんだよね。天気に恵まれたのもあるけど、今回は本当に良かったな。
ちなみに「何 m くらいの山に登るんですか?」に真面目に答えると、一番登ってるのは 2000〜3000m の山かな?たぶん。海外で登山したことないのでいままで登った中で一番高いのは富士山の 3776m で、2 番目の北岳と 3 番目の奥穂高も登ったことがあります。4 番目の槍ヶ岳は実はまだ登ってないし、登山やってる大学生が大好きな南アルプスの山々もほとんど登ったことない。南アルプスはそれこそどうせ行くならがーーーっとつなぎたい、とか思っちゃうんだけど、もう 1 週間とか 10 日とか山に籠もるのはなかなかできんだろうから細かく拾ってくべきだよなぁ。