二日酔い日記
Thu Oct 07 2021
「泥醉の翌朝に於けるしらじらしい悔恨は、病んで舌をたれた犬のやうで、魂の最も痛痛しいところに噛みついてくる。夜に於ての恥かしいこと、醜態を極めたこと、みさげはてたること、野卑と愚劣との外の何物でもないやうな記憶の再現は、砒毒のやうな激烈さで骨の髓まで紫色に變色する……」
俺は何度も何度も呟いた。高校生の頃から何度も呟いているので、すっかり暗記している。一字も間違えずに書くこともできる。萩原朔太郎が、俺が生まれるずっと前に、俺のために書き遺してくれた文章なのだ。
これは『バーにかかってきた電話』(東直己)で主人公が泥酔した翌朝に二日酔いと自己嫌悪で死にたくなっているシーンだ。
学生のときに読んで深く深く共感するとともにこういうの暗唱できるとかっこいいよな〜と思ってたんだけど、いまになっても「泥醉の翌朝に於けるしらじらしい悔恨は、」しか覚えていない。他にも外郎売とか「暗証できるようになりたい」と思うことはたまにあるけど実際に暗唱できるようになったものってなにもない。30 年近く生きてきて暗唱できるの、『ポケモン言えるかな?』ぐらいしかない。
『バーにかかってきた電話』はススキノ探偵シリーズの 2 作目で、10 年ぐらい前に『探偵はBARにいる』として映画化されてた。『探偵はBARにいる』は人生初のデートで見に行った思い出の?映画なんだけど、松田龍平演じる高田のキャラが良いこと以外はそんなに面白くなかった。デートも失敗した。
映画はそこまでだったんだけど、その後原作を読んだら面白くてハマってしまった。シリーズで 13 冊出ていて、全部 3 回以上読んだと思う。小説のシリーズにはまって何回も読み返すのなんて子供の時のハリー・ポッター以来だ。何回も読み返してるけど『宿酔の朝に』は覚えられない。
あと『札幌刑務所 4 泊 5 日体験記』っていうルポもめちゃくちゃ面白かった。Wikipedia みたら他にも結構エッセイ出してるみたいだから読もうかな〜。
昨晩、最近解散したプロジェクトの一部メンバーに声をかけてリモート飲みをした。正確には解散じゃなくて大幅縮小しただけで自分はまだ残ってるんだけど…。その飲みで久しぶりに泥酔してしまった。
朝起きて記憶にないツイートがある、というのも久しぶりだった。泥酔したときにわけわからんツイートを連投してしまうのは、電車で寝過ごすのを避けるための必死の抵抗なんじゃないか、という仮説を唱えてたんだけどリモート飲みで即寝れる環境でやってしまったので否定されてしまった。まあ昨日は連投したわけでも自己嫌悪になるようなツイートをしたわけでもないので良いんだけど。良くはないな。
泥酔したぐらいなのですごく楽しくおしゃべりできたんだけど、一方でこの 2 年ぐらい、もったいなかったな〜とも思った。声をかけた 2 人のうち 1 人は最初の緊急事態宣言とほぼ同時にプロジェクトに加入したもんだから、同じ空間で仕事をしたのは両手で数えられるぐらいしかないし飲みもランチも全く行ってなくて、これまで雑談らしい雑談をする機会がほとんどなかったんだよね。昨日話してみたら面白い話がぼろぼろ出てきたので、もっと日常的に雑談できてたらなあ、と思ってしまった。プロジェクトのためとかではなく自分のために雑談できるリモート作業環境をがんばってつくるべきだったのかもなぁ。まあ最後にこう思える機会を設けられただけでもマシと思おう。
なんにしても泥酔して二日酔いになる頻度はもっと少なくしたいですね。